2021917日の朝日新聞、「世界発2021」に「中国に異変、塾の撤退次々」なる記事があった。要約して紹介、コメントする。

 

中国の共産党政権が過熱している受験産業にメスを入れ、学習塾が相次ぎ教室を閉めている。背景には子供の負担軽減や、習近平指導部が目指す格差の是正といった狙いがあるが、教育は人々の人生設計にかかわるだけに波紋は大きい。

 

教育費増が少子化に直結、政府に焦り

 

北京大学など名門大学の付属中学が集まる北京市海淀区黄荘は、半径500メートルの範囲に100を超える学習塾がひしめく業界の最激戦区。塾がこんなに集まる場所は他にないという意味で、「宇宙の学習塾センター」と呼ばれている。

 

しかしこの夏、異変が起きた。軒を並べていた塾が相次いで撤退したのだ。8月、大手学習塾が集まることで知られた高層ビルを訪ねると、ガラス越しに壁や床が取り払われたがらんどうの教室が見えた。

 

異変を生んだのは、加熱する受験戦争に待ったをかけようとする政府の動きだ。中国共産党と中国政府は7月、「宿題と学習塾が義務教育段階の児童・生徒にもたらす負担の更なる軽減について」と題する通達を出し、宿題が増えすぎ親子の負担になっているとして、学齢に応じ自宅の学習時間の上限などを事細かに指示した。

 

学校の宿題以上に波紋を呼んだのは、学習塾への締め付け。通達は小中学校対象の塾の新規開設は認めないとし、上場による資金調達を禁止。既存の塾はすべて非営利団体として改めて登記させ、授業料も政府が監督するとした。

 

高学歴化が進む中国では、受験産業が拡大を続けてきた。報道によると、業界全体の年間売上額は1千億ドル(訳11兆円)、学習塾は1000万校以上、生徒は1億人に達していた。教育に投資を惜しまない風潮を反映し、授業料も高騰している。

 

政府は地方政府に対し、通達に基づいて監督を徹底するよう指示。「通報窓口」を設けさせ、保護者らの苦情を受け付けている。都市部で教室を広げた大手や中堅業者は事業の見直しを迫られ、「この夏、仕事を失った人は何百万に上るはず」という。

 

政権が介入に乗り出した理由の一つは、教育をめぐる問題が国家の未来を左右する「少子高齢化」の行方に直結するという焦りだ。政権は15年に「一人っ子政策」を廃止したが、その後も新生児の減少傾向は続く。

 

若い世代の子を持つことをためらう大きな理由は、高額のマイホームと教育費だ。長女が北京大学付属中学へ合格したエンジニアは、「3歳から英語を学ばせ、小学6年の時は英数国の3教科で塾に年間10万元(約170万円)かけた、「二人目はあり得ない」と話す。

 

習指導部は8月の重要会議で「共同富裕」の実現を目指すことにした。改革開放政策の陰で広がった格差を埋めるため、富の再分配に注力する方針。金持ちの子しか有名大学を目指す環境が与えられない状況を改め、所得格差による社会階層の固定化を防ぐという。

 

保護者は、改革が深まるか様子見している。小学5年の息子を持つ北京の女性会社員は「わが子をどう育てるか、育てたいかは庶民にとって最も私的で大事な問題。政府の力で変えるのは限界がある」と話す。

 

所得格差による特権階級を作らないという政策は、いかなる組織にもある共産党員優遇政策とは背反しないのだろうか。生むなと命令したり、生めと要求したり、14億人の国家を独裁運営するのは大変だ。李登輝さんの言われたように、七つくらいに分割したら良い。